イレギュラーな後遺障害認定のルール、相当・併合・加重
相当、併合、加重とは、後遺障害の等級表にそのまま当てはまらないような状態について、等級の認定をする際のルールです。この記事では、相当、併合、加重のそれぞれの意味と、どのようにして実際の認定が行われているのかを詳しく解説しています。
相当・併合・加重は、等級表に当てはまらない後遺障害の認定ルール
交通事故による後遺障害の賠償金は、後遺障害別等級表に基づいて定められます。このうち別表第1は介護を必要とする後遺障害が2つの等級に、別表第2は介護を必要としない後遺障害の一覧で142項目の後遺障害の状態が14の等級に、それぞれ分類されています。
自賠責保険ポータルサイト
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment.html
後遺障害等級表
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html
後遺障害の状態は、怪我をされた方によって様々です。等級表に該当がない後遺障害もありますし、2つ以上の等級に該当する場合もあります。また、事故に遭った時点で、すでに別の後遺障害を負っていたという場合もあるでしょう。
このように、そのままでは表に当てはまらないような後遺障害の等級を定める方法が、「相当」・「併合」・「加重」です。
後遺障害等級表に当てはまらない後遺障害は、相当する等級で認定
後遺障害別等級表に該当しない場合に、その障害の程度を審査して等級を認定することを、「相当」といいます。
例えば、味覚については等級表に記載がありませんが、基本となる甘味・塩味・酸味・苦味の4つの味全てが感じられない場合には第12級、4つの味の1つが感じられない場合には、第14級に相当するとして認定がされています。
併合は、後遺障害がふたつ以上ある場合
複数の後遺障害がある場合には、最も重い後遺障害を認定するのがルールです。しかし別表第2(介護を必要としない後遺障害)の中で、系列が異なる複数の後遺障害が残った場合には、最も重い障害等級からさらに繰り上げた等級が認定されます。このことを「併合」と呼びます。
併合の際には、後遺障害が一番重い等級と二番目に重い等級とを判断し、次のルールに基づいて最終的な障害等級を認定します。
- 5級以上の後遺障害が複数ある場合:最も重い等級+3等級
- 8級以上の後遺障害が複数ある場合:最も重い等級+2等級
- 13級以上の後遺障害が複数ある場合:最も重い等級+1等級
- 14級の後遺障害が複数ある場合:14級
なお③においては、次のaとbの保険金額を比較し、aの方が少ない場合には、そちらの金額が上限となります。たとえば、10級と13級の後遺障害が併合した場合、aの金額は「461万円+139万円=600万円」ですが、bの金額は「616万円」となっているため、aの600万円が自賠責保険金額の上限となるのです。
a それぞれの後遺障害等級の保険金額の合計額
b 併合後の等級の保険金額
また、別表第1(介護を要する後遺障害)に当てはまる後遺障害は、併合が行われません。
加重は、事故に遭う前からの別の障害があった場合
事故に遭う前に何らかの障害を負っていた場合には、事故によって程度が増した部分が認定されます。具体的には、事故前と事故後のそれぞれの後遺障害等級が認定され、事故後の等級の保険金額から事故前のものを差し引くことで、事故による後遺障害の保険金額が定められます。
併合や加重には、系列や序列により例外がある
部位・系列が、イレギュラーな後遺障害認定のルールを理解する鍵
併合と加重の例外を理解するために知っておきたいのが、「部位」と「系列」です。
部位とは、眼、耳、体幹、上肢……のように、体の部分を10の箇所に分類したものです。また系列とは、部位ごとに起こりうる障害の内容と組み合わせて、35のグループに分けたものです。
2つ以上の後遺障害が残った場合に、それぞれの障害の系列が異なるかどうかによって、併合や加重の対象となるか否かに違いが出てきます。
併合が行われないみなし系列
つぎの部位の後遺障害は「みなし系列」とし、併合が行われません。
- 左右の眼球における、視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害
- 左右の上肢や下肢の機能障害と、その同じ手や足の指の欠損又は機能障害
別々の系列をあわせてしまう組み合わせ等級
腕と肢は左右がそれぞれ別の系列となりますが、左右に一定の異なる後遺障害が発生した場合には、併合ではなく「組み合わせ等級」の方法で認定されます。
- 両上肢をひじ関節以上で失ったもの(第1級)
- 両手の手指の全部の用を廃したもの(第4級)
- 両下肢の用を全廃したもの(第1級)
- 両足をリスフラン関節以上で失ったもの(第4級)
例えば、左右の手指の機能が全て失われた場合には、「1手のおや指を含み4の手指の用を廃したもの」(第7級)を併合して第5級に認定されるのではなく、②の「両手の手指の全部の用を廃したもの」として、組み合わせ等級の第4級に認定されます。
併合後の等級を下げる序列
組み合わせ等級とは逆に、併合によって認定される等級がその等級に定められた障害の程度と見合わない(「序列(障害等級の重さの順番)」を乱す)場合には、併合後の等級を下げて認定されます。
例えば、右の下肢を足関節より上(第5級)、左の下肢はひざ関節より上(第4級)で失った場合には、併合すると第4級に3等級加えて第1級となります。しかし、第1級にある「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」には当たらないため、ひとつ等級を下げて第2級での認定となります。
どうすれば、納得のいく後遺障害等級の認定を受けることができますか?
このように複雑な等級が適切に認定されるためには、ご自身がどこに該当するかを見定めたうえで、戦略的に資料を揃えていくことが必要となります。また、事故に遭う前からの後遺障害があったり、後遺障害別等級表に該当する症状がない状態だったりする場合には、等級認定の前例を調べることなどで見込みをつけていくことになります。
専門的な知識や経験が必要な後遺障害の認定に向けた対応だからこそ、弁護士にご相談いただくメリットが高いと言えるでしょう。
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