交通事故の過失割合は、事故の定型パターンを修正して決まる

代表弁護士 飛田 貴史 (とびた たかし)

交通事故の過失割合は、基準となる事故の定型的なパターンから個別の状況や当事者の事情を勘案して修正し、決定されています。

この記事では基準となるパターンや修正方法の具体例を挙げ、どのように過失割合が決定されるのかをお伝えします。

過失割合の判断基準と取扱い

過失割合には、それを決定するためのいくつかの判断基準があり、さらに、本人に過失があるとされた場合でも、自賠責保険と任意保険・弁護士では取扱いが異なります。

自賠責保険は重過失の場合のみ減額(重過失減額)を行う

自賠責保険は、本人に7割以上の重過失がある場合に、割合に応じて保険金を減額します。
この場合の重過失とは、歩行者が赤信号で横断歩道を渡った場合や、車が一方通行の道を逆走した場合など、いくつかの定型的なパターンが定められています。

任意保険では主に『判例タイムズ』を使用する

自動車保険各社が共通で使用しているのが『判例タイムズ』(通称「判タ」)です。この本には、様々な判例から分析・パターン化された過失割合が掲載されています。

保険会社の担当者は、発生した事故を『判例タイムズ』に掲載されたパターンと照らし合わせ、さらに事故の発生状況や当事者の事情に応じて修正を行いながら、過失割合を判断していきます。

弁護士は『判例タイムズ』に加え、「赤い本」や判例の検索も行う

弁護士も、保険会社同様に『判例タイムズ』を使用しますが、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)なども併せて参照しています。さらには、多数の裁判例から、事故の状況や当事者の事情が似ている事例を探し、より適正な過失割合を導き出します。このように多様な根拠に基づく判断ができるのが、弁護士の強みと言えるでしょう。

なお任意保険会社各社でも、参照すべきものと認められる裁判例がある場合には、そこに示された過失割合を適用、もしくは参考にして割合を修正します。

『判例タイムズ』における過失割合の基本

このように、任意保険会社が扱う大半の自動車事故については、『判例タイムズ』に掲載された定型的な過失割合をベースとして、事故の状況や当事者の事情を勘案しながら修正を加えていきます。

それではどのようなポイントで、過失割合が分かれるのでしょうか。

当事者の属性・道路状況・走行状況が基本的な割合を決定する

おおまかに次の3つが、基本的な割合を決定するポイントです。

①歩行者と車、バイクと車、車同士などの属性

基本的には、車>バイク>歩行者の順で、過失の割合が大きくなります。

②直線道路か交差点か、また信号や標識の有無などの道路状況

直線道路での追い越しや、信号・標識の無視や見落としなど、よりイレギュラーな行為をした側の過失が大きくなります。また、T字路や広さに差がある道路では、細い道や直進できない道路から出る側に、過失割合が大きく定められています。

③直進か右左折かなどの走行状況

通常、走行中に優先される側の過失割合が、より小さくなります。
直進している車と右左折の車との事故であれば、右左折している車の過失割合が大きくなりますし、直進している車同士でも、一時停止の標識がある側の車の方が、過失割合が大きくなります。

双方の道路の幅や見通し、信号の色などが修正の要素となる

またそれに加え、つぎのような点が、割合を修正する要素となります。

  1. 一方が幹線道路、または一定程度以上に広いとみなせる道路か否か
  2. 交差点の場合には、右左折の状況や信号の色や交差点への進入のタイミング・減速の有無
  3. 右左折や進路変更の場合には、合図の有無やタイミングなど
  4. 昼夜や、塀や建物の有無などによる見通しの良し悪し
  5. 歩行者の場合は、児童・老人などの当事者の年齢や状況
  6. 著しい過失とされる、携帯電話を使用しながらの運転や、わき見運転などの前方不注意など
  7. 重大な過失とされる、酒酔い運転や居眠り運転、無免許運転など

過失割合の具体的な修正の例

それでは、例えば、歩行者が横断歩道ではないところを渡っていて、直進してきた車にはねられたというケースで、基本割合からどのように修正していくのかを見てみましょう。

このような場合の基本的な割合は、歩行者の基本的な過失は20%と、『判例タイムズ』には掲載されています。

そして、夜の時間帯の事故や横断禁止の規制がある道路での事故の場合には5%、幹線道路(一般的に二車線以上の国道を指す)だった場合には10%の加算がされ、逆に、住宅地や商店街にある道路だったり、歩行者が児童や老人だったりした場合には10%の減算がされるなどの修正要素が定められています。

これらの修正要素や割合は、事故の基本パターンごとに定められていますが、⑥の著しい過失は10%、⑦の重大な過失は20%の加算と、全ての基本パターンに共通の修正割合となっています。

基本的な割合から修正したと説明されたが、過失割合に納得がいかない

保険会社では、『判例タイムズ』の基本割合と、そこに書かれた定型的な修正要素によって過失割合を判断します。そのため、弁護士とは違い、個別の状況や事情による細かい修正ができていない可能性が考えられます。

過失割合に納得がいかない場合には、当事務所にご相談ください

当事務所では判例を検索できるシステムを複数導入し、数多くの事故の中から状況が似ているものと比較しながら、より適正な過失割合を確認しています。また、必要に応じて刑事記録を閲覧したり、現場検証を行ったりすることで、判断をより精密に行っています。

もし不利益を被る可能性があるのなら、ぜひわたしたちに対応をお任せください。

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