後遺障害で意思の疎通ができない方の損害賠償請求を代理する成年後見人とは

代表弁護士 飛田 貴史 (とびた たかし)

交通事故の損害賠償を請求できるのはご本人だけであり、ご本人が亡くなっている場合は遺族にその権利が相続されます。しかし、遷延性意識障害(植物状態)や重度の高次脳機能障害のため、判断能力に障害があったり、意思表示をできなかったりする場合には、本人に代わって損害賠償の請求を行う成年後見人を裁判所に選任してもらい、損害賠償請求を行う必要があります。

この記事では、成年後見人の種類や役割と、選任の手続きについて解説します。

遷延性意識障害(植物状態)や重度の高次脳機能障害の方の法律行為に必要な、成年後見人とは

判断能力が不十分な人を保護・支援する成年後見制度

認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分である方は、金銭管理や各種契約・法律行為を行うことが難しかったり、不利益な契約を結んでしまったりする可能性があります。そのような方を保護・支援するための制度が、成年後見制度です。

遷延性意識障害(植物状態)や重度の高次脳機能障害により、判断能力に障害が起きていたり、意思表示ができなかったりする方が損害賠償請求をするためには、この制度によって選任された成年後見人が手続きをする必要があります。

成年後見人の役割は、法律行為を行うこと

成年後見人の役割は、財産管理や契約などの法律行為を本人に代わって行うことです。本人の医療や介護、福祉などの生活にも目配りはしますが、食事の世話や介護は、その職務には含まれません。

成年後見制度の種類は「後見」「保佐」「補助」の3つ

成年後見制度には、つぎの3つの種類があり、ご本人の判断能の程度によって、いずれの制度が適切であるかが判断され、それぞれ「後見人」「保佐人」「補助人」が選任されます。

  1. 後見:自己の財産を管理・処分することができない(認知症が進み、職場の人や家族の判別がつかなくなって入院したなど)
  2. 保佐:自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である(物忘れが多く、買物で自分が払った金額がわからなくなったりして、日常生活を営む上で支障がでてきたなど)
  3. 補助:自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある(家族が不在の時に訪問販売員から必要のない高額な商品を購入してしまったなど)

本人に代わり、法律行為を行う・取り消すことができる成年後見人

判断能力が不十分な本人に代わって法律行為を行ったり、本人にとって不利益な法律行為を行った時にそれを取り消したりできます。
成年後見人の役割は、後見の種類によってつぎのように異なります。

  1. 後見人:お金や不動産などの財産に関しての全ての法律行為を、本人に代わって行ないます。また、日用品(食料品や衣類など)の購入のような日常生活における行為以外の全ての法律行為を取り消すことができます。
  2. 保佐:申立てにより家庭裁判所が定めた特定の法律行為を本人に代わって行ったり、本人が民法13条に規定された法律行為(訴訟や借金、家の新築や改築、増築、相続の承認や放棄など)を行う際に同意をしたり、本人が行ったそれらの法律行為を取り消すことができます。
  3. 補助:②の保佐とほぼ同様の役割ですが、同意をしたり取り消したりできる法律行為の範囲が、保佐よりも限られます。

親族がなることが多い成年後見人。後見事務の内容によっては専門家が選任されることも

成年後見人は、それぞれの事情に応じて家庭裁判所が選任します。
本人の親族が選任されることが多いのですが、親族が遠方に居住している場合や、後見事務に専門的な知識が必要だと見込まれる場合には、弁護士や社会福祉士のような法律・福祉の専門家が選ばれることもあります。

なお成年後見人は、本人の財産から報酬を受け取ることができます。報酬の額は、必要となる職務の状況と、本人の居住(施設か、自宅か)や財産の状況によって裁判所が判断します。
一般的に、専門職が後見人に選任された場合の報酬は、月2~3万円程度が目安といわれています。

成年後見制度の時間と費用と手続き方法

成年後見人の選任は、家庭裁判所への申し立てにより行われる

成年後見人を選任してもらうためには、ご本人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に、本人か配偶者、もしくは四親等以内の親族が申立てを行います。本人や親族が申し立てをするのが難しい場合には、弁護士などに依頼することも可能です。

主治医に成年後見用の診断書と診断書付票を主治医に作成してもらい、診断書に記載された「判断能力判定についての意見」に従って、後見・保佐・補助のいずれかの手続きを行います。家庭裁判所では、申立てをした人や後見人となる予定の人を面接したうえで、成年後見人を選任します。

また、後見事務の内容によって適任者を選任するため、申立人が希望する方が選任されるとは限りません。

審理には1~2ヶ月の期間と1万円程度の費用が必要

選任までにかかる期間は、通常1~2ヶ月くらいといわれますが、調査や精神鑑定が必要な場合には、さらに長引く可能性もあります。
費用は、収入印紙や切手代として1万円程度となります。また、精神鑑定を行う場合には、別途鑑定料がかかります。

近くに頼れる親族がおらず、自分が夫の後見人となることに不安に感じています

奥様がおひとりで財産の管理などを行うことに不安がある場合には、弁護士が奥様と共同で後見人となり、日常生活に関わることは今まで通り奥様が、財産の管理にかかる事務は弁護士が担当するというように、複数の後見人を選任してもらうことも可能です。

専門性の高い部分を弁護士にお任せいただければご負担が少なくなりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

成年後見人の申し立てから後見事務まで、当事務所にて相談できます

成年後見人の申立手続きには、診断書のほかに、申立書や戸籍謄本、説明書、親族の関係や財産の明細がわかるような書類など、数多くの資料が必要になります。
また、看護が長引くと経済的な負担も大きくなるため、早めに損害賠償金を受け取るためにも、成年後見人の手続きは前倒しで行える方が望ましいといえます。
看護や保険会社との交渉でご負担が多いご家族のために、資料の収集や成年後見人の申立、後見人としての事務まで、損害賠償の請求とあわせて親身にご相談を承ります。

ご本人が遷延性意識障害(植物状態)や重度の高次脳機能障害となり、損害賠償の請求がすすんでいないなら、当事務所にお任せください。ご家族のみなさまに、できる限りのお力添えをいたします。

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