植物状態(遷延性意識障害)の方が受け取れる慰謝料などの損害賠償金とは

代表弁護士 飛田 貴史 (とびた たかし)

長期にわたり、昏睡状態が続く植物状態(遷延性意識障害)について、具体的にどのような状態なのかはご存じない方が多いでしょう。
この記事では、植物状態(遷延性意識障害)の説明をはじめとして、その状態の方に対する慰謝料などの損害賠償金はどのように計算されるのか、そして本人に意識がない状態で、損害賠償金をどのように請求すればよいのかについて説明します。

植物状態(遷延性意識障害)の7つの定義

長期にわたって意識が戻らない植物状態とは

遷延性意識障害とは、昏睡状態(意識障害)が長引いており(遷延)、意志を伴う活動がない症状を指します。一般的には、植物状態と言われることもあります。
大脳の機能の一部、または全部が失われているために、意識が戻らないのですが、脳幹や小脳の機能が残っており、自発呼吸ができるため、生命維持装置の必要がない状態です。

植物状態の定義とは

日本脳神経外科学会では、植物状態の定義として次の7つの項目をあげています。

  1. 自力で移動することができない
  2. 自力で食事をとることができない
  3. 大・小便の失禁がある
  4. 声を出すことができても、意味のあることは言えない
  5. 「口を開いて」「眼を開けて」などの簡単な指示には応じられても、それ以上の意思の疎通ができない
  6. 眼球が動いたり、ものの動きを負ったりするが、それが何であるかの認識はできない
  7. ①~⑥の状態が、3か月以上続いている

植物状態(遷延性意識障害)で請求できる3つの損害賠償

前述の定義のような植物状態となった方は、働ける能力を100%失ったとみなされ、状態に応じて第1級から第3級までの間の後遺障害等級が認定されます。

①働けないことによる逸失利益

逸失利益とは、後遺障害がなければ将来的に得られたはずの経済的利益(収入など)のことを指し、以下の数式によって求められます。

逸失利益=①基礎収入×②100%(労働能力喪失率)×③就労可能年数に対応するライプニッツ係数(④中間利息控除)

後遺障害が残ったことによる逸失利益は、事故に遭う前の収入の有無や職種によって大きく異なります。

計算式の項目の詳細については、【(後遺障害の場合)収入の有無や職種によって逸失利益の計算方法とは】をご覧ください。

②付添人の費用をまかなうための介護費用

付添がないと生命の維持が難しい植物状態では、将来の介護費用が損害賠償金として支払われます。介護費用は、以下の数式によって求められます。

将来の介護費用=①1日の介護料×②365日/1年×③平均余命期間に対応したライプニッツ係数(④中間利息控除)

①の1日の介護費用は、必要な介護の負担度合いや、家族などの近親者が介護をするか、職業付添人に依頼するかなどの状況によって異なります。

具体的には、家族などによる介護は8,000円/日程度、職業的な付添人による介護は原則として実費全額が認められることになっていますが、具体的な看護の状況により増減することがあるとされています。また、労働が可能な年齢とされている67歳までは、親や配偶者が介護をし、その後は職業付添人が介護するという前提で計算をする場合も多く見られます。

③の平均余命年数に対応するライプニッツ係数の具体的な数値については、以下の資料をご覧ください。

国土交通省 自賠責保険ポータルサイトより
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment.html
支払基準・てん補基準 参考資料
平均余命年数とライプニッツ係数表
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/yomyou.pdf

この記事では、介護費用の対象となる年数として、平均余命としている説を採用しています。

実際には、植物状態の方には症状が重く、多臓器不全や感染症を併発する危険性が高い場合などもあり、一生を何年と定めるかについての見解や判例はまちまちです。しかし人道的な見地からいっても、平均余命が採用されることが多くなっているといえるでしょう。

介護費用には、おむつ代などの介護雑費や、自宅で介護する場合に必要とされる器機などの購入・将来の買替にかかる装具代も含まれています。

③自賠責・任意基準と、弁護士基準とで異なる、本人と近親者に対しての後遺障害慰謝料

自賠責や任意基準と、弁護士基準では、後遺障害の慰謝料の金額が大きく異なります。

自賠責基準・任意基準の慰謝料額

自賠責基準(※)の慰謝料額は、認定された後遺障害等級により、次の表のようになります。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した後遺障害による損害の保険金等の支払いについては、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した後遺障害による損害の保険金等の支払いについては括弧内の金額です。

後遺障害等級 慰謝料額
第1級 1,150万円(1,100万円)
(要介護) 1,650万円(1,600万円)
第2級 998万円(958)万円
(要介護) 1,203万円(1,163万円)
第3級 861万円(829)万円

また、自賠責保険では要介護の第1級では4,000万円、介護を要しない第1級や要介護の第2級であれば3,000万というように、保険金額の上限が定められています。このため、治療費や逸失利益が高額になった場合、慰謝料に充てられる保険金額がなくなるというようなことも考えられます。

任意保険では、保険会社各社がそれぞれ独自の基準で算出しますが、概ね自賠責保険の慰謝料額に上乗せする形で決定されているようです。

弁護士基準は、自賠責・任意基準の2倍~3倍

一方、後遺障害等級第1級~第3級までの後遺障害慰謝料は、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』、通称「赤い本」の算定基準では、次のようになっています。

後遺障害等級 慰謝料額
第1級 2,800万円
第2級 2,370万円
第3級 1,990万円

このように弁護士基準で算出すると、自賠責基準の2倍~3倍の慰謝料額となるのです。

近親者の慰謝料は、本人の慰謝料の10%~30%

重度の後遺障害の場合、近親者も別途慰謝料を請求することが可能です。
必ずしもパーセンテージで表現できるものではありませんが、裁判例によると、近親者の慰謝料は本人の慰謝料の10%~30%ほどが認められているように見受けられます。

損害賠償を請求するための成年後見人制度

交通事故の損害賠償を請求できるのはご本人だけであり、ご本人が亡くなっている場合には遺族にその権利が相続されます。
しかし、遷延性意識障害(植物状態)や重度の高次脳機能障害のため、判断能力に障害があったり、意思表示をできなかったりする場合には、本人に代わって損害賠償の請求を行える成年後見人を裁判所に選任してもらい、損害賠償請求の手続きを行う必要があります。

成年後見人についての詳細は、【(後遺障害の場合)収入の有無や職種によって逸失利益の計算方法とは】をご覧ください。

相手の任意保険会社から言われた賠償金額が適切なのかは、どのように判断すればよいでしょう?

肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料や、将来にわたる費用を現時点で計算するため、どの金額が適正か、というのは難しい問題ですが、遷延性意識障害(植物状態)のように、ご本人の意識が戻らない状況では、ご家族が納得できる金額であることが判断の一つの目安です。

保険会社が提示する慰謝料の金額は、自賠責保険の規定をベースにして、個々の事故状況やご本人の事情を鑑み、各保険会社独自の裁量で上乗せをした金額であることがほとんどであり、画一的になる傾向にあります。

対して弁護士が算出する慰謝料は、判例から導き出した水準を掲載する『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)、『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)などのテキストをベースにして個別に調整をして判断をするため、より現実的な金額となる可能性が高いといえるでしょう。

遷延性意識障害(植物状態)の方のご家族をサポートします

当事務所では、ご依頼をいただいてから解決するまでの間、対応を事務担当者などに任せることをせず、後遺障害についての経験や知識が豊富な弁護士がサポートをしています。
フットワークが軽いのが持ち味で、付添などで外出困難なご家族のためには出張して対応し、お電話での問い合わせに対しても、丁寧な説明を行います。

ご家族が遷延性意識障害(植物状態)となられ、今後の交渉にご負担を感じていらっしゃるなら、ぜひお気軽にご相談ください。安心できるサポートを、お約束いたします。

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